現在は親王飾りが人気ですが、昔は豪華な七段飾りも人気がありました。内裏雛の下に飾られているのが三人官女、五人囃子、随身です。「三人官女ってどんな役目があるの?」とご存知ない方も多いかもしれません。そこで今回は「三人官女」について解説します。
三人官女
宮廷に仕える女官を表した3人一組の雛飾り用の人形のことを言います。年代は明確ではありませんが、江戸後期に出現したとされています。段飾りでは、通常上から二段目に飾られ、全員が立ち姿、全員が座り姿、中央の一人が立ち姿、中央の一人が座り姿など、さまざまな形式があります。
中央の人形が島台もしくは杯を載せた三方を持ち、向かって右が長柄銚子、左が加銚子(提子)を持つのが一般的です。この小道具によって雛飾りがその主役たる男雛女雛の婚儀を表現したことを示しています。
中央を島台持ちとしたのは関西(京都風)に、三方持ちとしたのは関東に多く、この官女を年長者として表すため、お歯黒や眉を剃り落とした容貌にすることが多いのです。
官女は白地の小袖または振袖に緋色(ひいろ)の長袴を着用します。稀に若い官女の意味で袴を濃色(こきいろ)としたり、一人を愛嬌のあるお多福や老女仕立てとすることもあります。明治以降は中央の一人もしくは全員を袿姿(うちきすがた)としたものもあります。
業界用語では「三官」と言います。官女の人数は役割の最少人数の3人に定着しましたが、5人、7人、9人のものなどもあります。
日本人形協会発行「にんぎょう日本」2023年3月号「素朴なギモンvol.80」を一部編集して掲載