伝統ある日本人形文化の
振興と継承のために

五月飾り――鎧飾り、兜飾り

前回は鯉のぼりについて解説しました。鯉のぼりは「外飾り」というカテゴリーに入り、神様に守ってもらうため、見つけやすいように目印として屋外に飾ります。一方の「内飾り」は男の子の健やかな成長を願って屋内に飾ります。「健やかに育ち、将来、立派な人間になるように」という願いを込めて飾られる五月飾り。今回は内飾りを代表する鎧飾り(よろいかざり)と兜飾り(かぶとかざり)について解説します。

◆「子ども守ってくれるように……」という願いを込めて飾る

大河ドラマをはじめ、戦国時代が舞台のドラマや映画などに登場するのが戦国武将。彼らは戦のときに装備として鎧や兜を着用していました。鎧は、己の身体を敵の攻撃から守ってくれます。兜も身体の大事な部分である頭を保護してくれる武具です。そうしたことから現在では、五月飾りの鎧兜は身体を守るものという意味が重視され、事故や病気から大切な子どもを守ってくれるようにという願いも込めて飾られています。
この風習は鎌倉時代の武家社会に源流があります。江戸時代初期、武家では5月5日に男の子の誕生を祝い、鎧兜の作り物や幟旗(のぼりばた)を飾り、男の子の健やかな成長と家の繁栄を祈りました。
鎧兜を飾るようになったのは、武士にとって、鎧や兜は命を守るための道具であるとともに、精神的な象徴でもある大切な宝物だったからです。
武家社会で生まれた風習はやがて庶民にも広まっていきます。大きな作り物の兜や武者人形、紙でできた幟旗などを飾りました。これらの飾り物は当時、神様の目に留まりやすいよう屋外に飾っていましたが、江戸時代中期以降、幟旗以外の飾り物は小型化をして屋内に飾るようになりました。

◆鎧兜の種類はいろいろ

鎧兜の五月飾りにも雛人形同様、段飾りがあります。現在はあまり見かけなくなりましたが、鎧か兜を上段の中心に置き、魔よけの意味を持つ弓矢や太刀をはじめ、軍扇や陣笠などの武具とともに粽や菖蒲酒も飾ります。
商品数が最も多いのが兜飾りです。一般的には鎧飾りと同じように両脇に弓矢と太刀を置いて飾ります。節句人形店に行くと、さまざまな兜があります。ヘルメット部分にあたる鉢そのものに奇抜な装飾を施したものは変わり兜と呼ばれます。コンパクトサイズのミニチュアや、実際にお子さんが被れるような大きさのものも。飾りやすさ、片付けやすさを考えた収納箱付やケース入りのものなど多種多様です。ぜひ店頭で実際にご覧になってみてください!

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