日本には長い歴史の中から生まれた様々な人形があります。
ここでは、人形を製造法別や伝統的工芸品指定別などから紹介します。
木彫り、または桐塑(とうそ)などで作った胴体部分に、裂地(きれじ)を貼り付けて、衣裳を着ているように見せる人形です。胴体に彫った溝に、裂地の端を埋め込んで胴体と裂地を密着させ、頭(かしら)などは別に作り、後から差し込みます。溝に裂地を埋め込むことを「木目込む(きめこむ)」というところから、木目込人形(きめこみにんぎょう)と呼ばれます。代表的なものに『江戸木目込人形』があります。
木や藁などでかたち作った胴体に衣裳を着せつけ、これを台に固定した人形です。従って一般に衣裳を着せ替えることはできません。頭や手足は別に作り、衣裳を着せつけたあとから差し込みます。別名、浮世人形、姿人形などとも呼ばれ、姿かたちの美しさを鑑賞することを目的としています。衣裳着雛人形や五月人形も、広い意味ではこの衣裳人形に分類されます。
少年少女の姿をかたどった人形です。頭や手足は、木彫り、または桐塑(とうそ)などで作られています。もともとは手足が自由に動き、抱いたり、座らせたり、衣裳を着せ替えたりして、子供たちが遊ぶための人形でした。しかし、最近では、むしろ鑑賞用の人形として親しまれています。
木彫りや桐塑で作った本体に真っ白な胡粉(ごふん)を塗り重ね、磨きあげて仕上げた幼児の姿の人形です。三頭身なので三つ割人形、あるいはその肌の色から白肉(しろじし)、白菊(しらぎく)とも呼ばれていました。「御所人形」という名は、宮廷や公家の間で愛されたことや、御所から贈り物の返礼として大名などへ贈ったことに由来しています。
ツヤのある真っ白な肌や、大きな頭、ぽっちゃりとした肉づきの良い体、小さな目鼻や口など、幼児の健康を象徴した姿に特徴があります。近年、本体をやきもので作ったものも生産されています。
人形には、木目込や衣裳、市松人形以外に、『奈良人形』や『こけし』のように木で作る人形や、『博多人形』のような土人形などがあります。このほか、羽子板や破魔弓、あるいは五月飾りの甲冑なども人形の一部として位置づけられています。
日本人形の構図には、神話や伝説、能や歌舞伎、舞踊などの芸能、あるいは文学から題材を採ったものがいろいろあります。かつては人々の間の常識だったこれらが、現代ではあまり知られていない事柄になってしまったのは残念ですが、人形はこうして、歴史に育まれた豊かな文化を今に伝える役割を担っているのです。