人形を飾ることって、実際のところ意味あるの!?

専門家に聞いた幸せな親子関係を築く子育ての秘訣

モノを買うより、それによって得られる“体験”を重視する時代といわれる昨今。ひな人形や五月人形などの節句人形には歴史・文化的な意味があると、なんとなく知ってはいるものの、「収納に困る」「場所が無い」「値段が張る」などの理由から飾らない家庭が以前より増えているのが実情です。

とはいえ、ひな祭りや端午の節句は、子どものための大切なお祭り。古くは江戸時代から伝統的に行われてきた「節句人形を飾る」事には文化的な意義のほかにも、子育ての上でメリットがあるのではないでしょうか?
そこで今回、節句人形を購入した先輩ママたちへのアンケートと、子育ての専門家へのインタビューを実施。“節句人形を飾るメリット”について、いま一度調べてみました。

Research 01

先輩ママ88人に聞いた五月人形、こいのぼり、おひな様を買ってよかったこと

Comments

日本の文化を教えてあげたかったので、子供が喜んでいる姿を見て買ってよかったと思った。神奈川県/33歳/女性

実際嬉しそうに触りたがったり雛祭りの歌を歌ったりしているところを見ると、形としてお人形があるのと無いのでは子供の喜び具合も違うだろうし、いい思い出として心に残ってくれると思う。静岡県/35歳/女性

場所をとるし部屋に合わないと思ったけど、お飾りを見ると子供の成長を何となく振り返ってほっこりする。神奈川県/29歳/女性

自分も小さいころ買ってもらったので、同じようにしてあげたかった。子どもと一緒に飾り付けができるので、楽しい!岐阜県/29歳/女性

節句人形を購入した先輩ママたちにアンケートを実施したところ、上記のようなコメントが集まりました。
「子どもが喜ぶようすを見られた」というエピソードをはじめ、「一緒に飾り付けることが楽しい」「家族があつまる機会が増えた」など、人形があることによって生まれたコミュニケーションについて、とくにメリットを感じている人が多いようです。

アンケート出典|2019年12月|
マイナビウーマンWEBアンケート|
子どもを持つ22歳~45歳の男女対象|
有効回答数88件

Research 02

専門家に聞きました!子育てにおける節句人形のメリット

では、実際にこのようにして祝うことは、良好な親子関係の構築や子どもの成長においてどのような影響があるのでしょう?
幼児教育の専門家である竹内エリカさんに伺います。

竹内エリカさん

竹内エリカさん

幼児教育者。日本キッズコーチング協会理事長。20年にわたり発達心理について研究し、これまで約15,000人の親子に携わる。発達支援では多動症・不登校の克服、運動指導では全国規模の大会で第1位他、14賞のコーチ実績がある。行動科学をベースにしたコーチングを活用し、お母さんや先生を対象に日本国内ほかアジアでも講演活動や育児相談を行っている。『一生を決める0歳から6歳までの育て方』シリーズほか著書多数。ラジオ『わくわく子育てCafé』パーソナリティ。
https://ameblo.jp/heath-lab/

「これはなに?」「どうして?」と興味をもつことが子どもの感性を磨く

子どもは節句人形を見ると、「どうして飾るの?」「なんでこんなにたくさんの服を着てるの?」など、いろいろな感想を口にすると思います。このように、「なぜ?」と興味をもって考えることは知能の発達の原点になりますし、感性を磨くチャンスです。

というのも最近の子どもたちは、時間があるとスマートフォンやゲーム機器を手に取って、受け身的な刺激を受けることが多いようです。また、親御さんの子どもへの接し方も「あれしなさい、これしなさい」と、つい子どもを急かして手を出し過ぎてしまうことも多くあります。つまり現代は、子ども自身が何かをゆっくり考えたり、親が子どもの考えに耳を傾ける時間が取りづらい環境であるともいえるのです。

そういう意味で、節句人形のように伝統的なものを見たり飾ったりすることは、子どもにとって興味や好奇心を刺激するきっかけになるでしょう。何かに興味をもって感性を刺激する時間を得られることは、子どもの成長において貴重な体験だと思います。

毎年の恒例行事は親子の絆を強化するのに有効

また、子どもの成長においてもう一つ重要なのが自己肯定感です。子どもが自己肯定感を得るために「自分は愛されているんだ」と確信をもてている、ということが欠かせません。それには、親子間のコミュニケーションが大きく関わってきます。

たとえば、節句の時期に親子で一緒に人形を飾ると「兜を買ってもらって嬉しかった」「ふざけてお母さんに怒られた」「ひな人形を飾るのに時間がかかった」など、子どもはさまざまなことを感じるでしょう。思い出や記憶、そして親子の絆というのは、感情とともに形成されますから、ポジティブ・ネガティブ問わず、とにかくさまざまな感情をもつことが大切です。さらに、それが毎年恒例の行事であれば、決まった時期に繰り返されるのでより記憶に強く残りやすくなります。そして感情とともにその記憶が引き出されるたび、親子間の絆が深まっていくのです。

また、人の脳には、「聞いたこと」より「見たこと」「体験したこと」の印象が残りやすいという“メラビアンの法則”があります。子どもを想って人形を飾る習慣は、経験としてそれが愛情としてインプットされますから、親が子どもへの愛情を示す方法としては効果が大きいです。さらに人形を飾ることによって触れた感覚も記憶のなかに残ります。親子で節句人形を飾る習慣は、豊かな人間性を育む手立てとして理想的と言えるでしょう。

まとめ

  • 非日常のものに触れて「なぜ?」と興味を持つことは感性を磨くきっかけになる
  • 親子で一緒に人形を飾り、いろいろな感情をもつことで、思い出や親子の絆が形成されていく
  • 毎年の恒例行事として決まった時期に繰り返されることで、より強く記憶に残りやすい
  • 「聞いたこと」より「実際に見たこと」「触れたもの」のほうが印象に残りやすい

節句人形は親と子をつなぐコミュニケーションツール

竹内さんのお話から、体験したこと、そして定期的に繰り返されたことは記憶に残りやすいということがわかりましたが、実際にアンケートでは、子ども時代の思い出を覚えているというコメントが多く集まりました。

Comments

毎年母と一緒に飾って写真を撮った思い出がある。愛知県/24歳/女性

小さいころは特別に飾ってくれるのを楽しみにしていた。みんなでお寿司を食べたのがいい思い出。千葉県/31歳/女性

毎年2月の上旬から1ヶ月間、立派な七段飾りを飾ってくれて、その間に友達や親戚が見に来てくれた。当日は着物を着せてもらって、プレゼントのおもちゃを買ってもらえるので、とても楽しみな日だったという記憶がある。愛知県/27歳/女性

竹内さんはさらに「子どもが節句人形に興味をもって質問をしてきたら、一緒に調べてみるのも良いですよね。昔の人たちがなぜ人形を飾り始めたのかという背景や、日本のモノ作りの高度な技術についても知ることができます。日本の文化に触れられるという点で、今後、国際化社会において必要だといわれている“日本人ならではのアイデンティティ”も養われると思います」とコメント。
日本ならではの行事を祝うことは、親子のコミュニケーションのきっかけとしてのみならず、子どもが今後成長していくうえで大切なことを教えてくれるといいます。
端午の節句やひな祭りの日は、節句人形やひな人形、こいのぼりを親子で一緒に飾って家族の思い出を作る……そういう、かけがえのない時間を過ごしてみてはいかがでしょうか?

アンケート出典|2019年11月|
マイナビウーマンWEBアンケート|
22歳~45歳の女性対象|有効回答数317件